世界共和国

 柄谷行人の同名の著書を読みながら、「こういう本をずいぶん昔に読んだ気がするなあ」と思っていたら、今日思い出した。江口朴郎の「世界史の現段階と日本」(岩波書店)である。江口朴郎は歴史学研究会の委員長も務めた有名なマルクス主義西洋史学者で、日本史でいうところの石母田正みたいな存在の人であった。15年くらい前に亡くなり、追悼論文集も著作集も書棚に並んでいる。「帝国主義と民族」が代表作であるが、この「世界史の・・」はかなり晩年の著作であった。ちなみにまだ冷戦のころで、ゴルバチョフが登場した頃ではなかったかと思う。日本の首相は中曽根康弘、イギリスはサッチャー、ドイツはコールでアメリカはレーガンという「タカ派同盟」が幅を利かせていたころであった。江口はその本の中でそれまでの学術的発言とはちょっと違った事を書いていた。それがズバリ「いずれ世界はひとつになるのではないか」という内容であった。江口によれば「アメリカもソ連も歴史上類を見ないような広大な連邦国家である。多くの民族を抱えながらひとつの国を維持しているのは壮大な実験といえる。これはまさしく世界連邦への過渡期の形態である。」ということであった。確かこの本は結構話題になった。「あの江口が何を脳天気なことを・・」そういう反応だったように思う。数年のちに広松渉が「アジア共同体構想」を提示した時も似たような反応であった。が、私は純粋に「面白い」と思って読んだ。結局、歴史はそうは流れずに「冷戦終結」「民族紛争」「テロ」「アメリカ帝国主義」という風に流れていった。が、「アメリカの覇権主義」とは別の意味でグローバリズムは確実に進んでおり、人間の交流もどんどん国境を越えている。理想主義的に述べていた江口朴郎の発想には明らかに彼が専門とした第1次世界大戦後の「国際平和主義」があったように思う。
 世界連邦という意味では、EUはまさにその「実験中」である。それに比べて東アジアは何とキナ臭いことか・・・・・
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by yksayyys | 2006-05-16 23:09 | 社会 | Comments(0)

ちょっとすねた感じでこの世を眺めてみると・・・


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