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アマノジャクはこう考える

記憶と事実

 ぽんジュースさんのコメントにあった「記憶と事実」という言葉がずっと頭に残っています。歴史は「記録」と「記憶」から過去を構成しようとするものだと思います。記録は文字資料であったり遺跡・遺物などのモノであったりします。記憶は歴史事象に関わった人物の言葉であります。ただ、それを「事実」と言えるかというとそうは言えない部分が大きいと思います。現代に近づくと、記録も多く記憶している人物も多いのでより「事実」に近づくとは思いますが、それでも「事実」であるかについては留保すべきだろうと思います。例えば、今取り組んでいる「特攻基地」についても記録はあります。しかし、それは軍であったり自治体が主体となって編集したものであり、内容は「ねらい」に沿って取捨選択した記述だろうと考えられます。敗戦の日に多くの資料が焼かれているのを多くの人が目撃していますが、当然その資料がその類いの記録に残されているはずはありません。個人の記録にしても、その人の思想・信条(心情)が介在するのは当然のことであり、そこで捨象されているものも少なくはないでしょう。またその「語り」がその時代、組織の需要によって利用されたりされなかったりも出てきます。自治体である知覧町が特攻の語り部として高木俊郎から鳥浜トメに切り替えていくのも自治体としての「ねらい」と切り離すことはできません。私がいくらか取り組んだ聞き取りつまりオーラルヒストリーについても、同じ人物から毎回違った答えが返ってくることもあり「事実」とは言えない部分があります。しかし、できることはそのような「記録」と「記憶」から歴史の「像」を構成していくことだろうと思います。私は、この特攻基地ひとつにしても闇に葬られている「事実」がたくさんあると思っています。最近ようやくわかってきたこと、口を開く人が出てくるようになったこともあります。「事実とは何か?」という大前提に史料批判の精神を失わずに、なおかつ「記録」と「記憶」の発掘、検証に力を注いでいく。歴史研究の作業とはそういうものだろうと思います。
 今やっている作業で学ぶことはたくさんあります。だからこそ、先人の業績に心から敬意を表したくなります。
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Commented by ぽんジュース at 2016-02-28 18:01 x
こんにちは。韓国では朝イチ番の入場料が600円と格安なのでもうひとつ2月の話題映画『東柱』を観てきました。

http://library.rikkyo.ac.jp/archives/exhibition/dongju/nenpu.html

『序詩』

死ぬ日まで空を仰ぎ
一点の恥辱なきことを、
葉あいにそよぐ風にも
わたしは心痛んだ。
星をうたう心で
生きとし生けるものをいとおしまねば
そしてわたしに与えられた道を
歩みゆかねば。

今宵も星が風に吹き晒らされる。(伊吹郷訳)

戦時下、福岡刑務所で尋問されるドンジュをいとこのソン・モンギュとともに描いた作品です。国民的詩人といわれるドンジュが詩をどのように書いたのか、その追憶をたどる映画でした。昨日の『鬼郷』とも同時代の作品なので合わせてみるとさらに感慨深いものでした。

こちらで歴史教育について研究しながら、「事実」と「記憶」の問題を考えていました。わたしは、あんまり文学好きではなく、ほとんど文学を読んだことがないのですが、それでも朝鮮のことを調べていると「言葉」と「歴史」を考えさせられます。

『東柱』で特高の刑事が調書にサインを迫るシーンがあるのですが、そこにかかれた「事実」とはなにか。「捏造」と「事実」を問うソン・モンギュは迫力がありました。

詩と時代性。とても奥深いテーマでした。

そういえば,被爆者証言の「事実」と「記憶」をめぐっては以下の書籍も興味深いものでした。ご参考迄に。

未来からの遺言 ―― ある被爆者体験の伝記 ――
伊藤 明彦
■体裁=A6.並製・258頁
■定価(本体 920円 + 税)
■2012年7月18日
■ISBN978-4-00-603246-3 C0136

吉野啓二さん(仮名)が語った被爆者としての半生は,きわめて具体的で未曽有の衝撃力を備えていた.だが感動的なその証言の中に大きな謎が含まれていたことが判明する.果たして吉野さんは幻を語ったのか.被爆者の声を生涯記録し続けた著者が,吉野さんの軌跡に寄り添い,被爆者とは何かを根底から問い直した衝撃の一冊.待望の復刊.(解説=今野日出晴)

https://www.iwanami.co.jp/moreinfo/6032460/top.html
by yksayyys | 2016-02-28 10:08 | 社会 | Comments(1)

ちょっとすねた感じでこの世を眺めてみると・・・
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