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アマノジャクはこう考える

中塚明「歴史家山辺健太郎と現代」高文研を読む

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 出版社に勤める友人が手がけた本である。山辺健太郎という歴史家の名前は以前からずっと頭の中にあったが、この本を手にして「何をした」というのが説明できないでいた。が、読み始めてすぐに「ああ」と納得した。韓国人Iさんと知り合いになった時に朝鮮半島の歴史に関する本を買い集めたのだが、その時に真っ先に購入した本が山辺の「日韓併合小史」「日本統治下の朝鮮」(ともに岩波新書)であった。しかし、山辺という人がこんなに魅力的な歴史家とは知らなかった。いわゆるアカデミズム出身の歴史家ではない。小学校を出て労働運動を経て左翼活動に邁進しながら研究を進めた人物である。かと言って党派的なプロパガンダに利用される歴史家ではない。山辺が主張する2つの考えがある。それは①日本の近代史を理解するには朝鮮侵略史を研究すべし。②一次史料にもとづいて実証的に研究すべし。ということである。その2点には山辺のある問題意識が横たわっている。それは、「歴史には偽造、捏造がある。」ということである。それを物語る象徴的な場面が山辺自身の文章の中にあるので紹介する。山辺が予防拘禁所(思想犯収容刑務所)で知り合った朝鮮人活動家金天海を語ったエピソードである。金は拘禁所の役人にこう言う。「日本の歴史の中で、真理のために身命を惜しまない学者があったか。朝鮮では帝王の前で首を刎ねると言われても自説を曲げないで、命を奪われた学者がたくさんいた。今の日本では帝王の御用をつとめるのが学者の役目であるようだ。君たちは、そんな学問しかしていないのだ。恥ずかしいと思わないのか。」山辺はその著の中で戦前の日本における朝鮮史がいかにいい加減なものであるかを例を挙げながら論破していく。
 今、書店には「嫌韓」モノが並んでいる。飲み会に行くと酔った勢いで「生意気な韓国」という同僚が何人もいる。その人たちがどのような史実、根拠を持ってそう主張しているのかいつも不思議に思う。山辺は、党の執行部にもいたが歴史家としては自由人であったと言う。そこが大きな魅力の理由であると考えられる。その系譜はこの本の著者中塚明氏に確実に引き継がれているようである。
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Commented by ぽんジュース at 2016-03-16 05:30 x
こんにちは。
面白そうな本の紹介ありがとうございます。岩波新書のほうは読んだことがありましたが,この本は知らなかったのでアマゾンで購入しました。日本で読みたいと思います。

昨日は,大学院の初回授業でした。修士と博士の院生が受講しているのですが,テーマは「社会科学と歴史教育」です。

具体的には,Walter C. Parker「Social Studies Today: Research and Practice (100 Key Points)」2015とE. Wayne 「The Social Studies Curriculum: Purposes, Problems, and Possibilities」2014という英語の社会科教育に関する本を読んで,「韓国の社会科教育からみる歴史教育の現場と研究」を考えていくというものです。残念ながら3月末まであと1回しか受講できませんが,続きの議論もぜひ聞いてみたいですね。

みんな100頁近い内容を10頁のレジュメに要約して3時間ぐらい発表していました。こちらでは,大学院の授業は現職の先生も来るので夕方の6時からスタートです。日本でも紹介されている有名な米国の先生方の最新論文を読んで議論するというのは非常に面白かったです。テーマも日本では社会科教育の文脈で歴史教育を考えるのが当たり前ですが,韓国は歴史科が中等教育では独立しているので,歴史教育の文脈で社会科教育を考えるのが一般的です。

中等段階の歴史教育の関係者は,いわゆる日本でいう「史学科」出身の方が多いので,「社会科教育と歴史教育」という視点で市民教育を考えるというのは多くはないかもしれません。教えている先生もアメリカで学位を取った方なので,本に出てくる人物が同時代の人で回想的で興味深かったです。

昔,大学で聞いたアメリカ社会科に関する授業内容を改めて勉強したという感じもあり,英語もがんばらねばと思った次第です。日本でも最近翻訳書が次々に刊行されていますので,ご興味があればご一読ください。
by yksayyys | 2016-03-15 16:20 | 読書 | Comments(1)

ちょっとすねた感じでこの世を眺めてみると・・・
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