飯倉章「第一次世界大戦史~諷刺画とともに見る指導者たち~」(中公新書)を読む

 歴史を時代背景や社会構造といったものではなく、単に「人物ドラマ」として描こうとしたものです。大河ドラマみたいなものと言ったほうがわかりやすいかもしれません。
 第一次世界大戦に関わる皇帝、国王、政治家、軍人がどのように考え、どのような判断を下していったかの記述が続きます。結構ややこしいのですが、人間のすることですので喜怒哀楽のともなうわかりやすい人生劇場となっています。ただ、戦争ですのでその誤った判断、作戦で「10万人が犠牲に」なったり「13万人が凍死」してしまったりします。その数字のひとつひとつの命の重さを考えれば戦争というものがいかに無益で残酷なものかがわかりますが、著者はあえてそこはさらっと書いています。教科書的に言えば第一次世界大戦は「早期に決着すると思われたこの戦争は、参加国・地域の広がりと新兵器の登場、総力戦の様相の中で長期の戦争に至った」のですが、その変化も1914年から1年間ずつに区切ることでさらに細かく描写されていきます。まさに「一進一退」が続きます。予想以上にこの戦争は「接戦」だったようです。
 ただ、繰り返すようですが、指導者の気まぐれや思い込みでいかに多くの人命が犠牲になったかは強調してもし過ぎることはないように思います。しかし、終戦後ほどなく第二次世界大戦となり、それも冷戦につながり、今も変わらず「キナ臭い」世界の現状を考えると暗澹な気持ちにさせられます。唯一の救いは本書で数多く紹介されている戦争の風刺画です。プロパガンダとは一線を画した風刺画はなかなか奥が深くユーモアに富んだものです。ジャーナリズムととらえていいのではないでしょうか。授業で使えそうなものも結構あります。
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by yksayyys | 2016-04-10 20:12 | 読書 | Comments(0)