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アマノジャクはこう考える

精神のきば

 梅棹忠夫の評伝を読んでいて興味を持った部分があった。経済学者森嶋通夫が「日本がソ連に攻め込まれたら、毅然として降伏したらいい」と雑誌か何かに発表したらしい。森嶋の文章は岩波書店のものを何冊か読んだことがあるが、経済書以外はどれもわかりやすく断定調で書いてあるので読みやすかった記憶がある。その説は当然論壇で話題になったらしい。ただ、面白いのはその説を、評伝の主役梅棹をはじめ司馬遼太郎、リアリストとして有名な永井陽太郎まで「90%賛成」と述べたということである。共通するのは戦中世代。学徒兵世代ということである。「多くの犠牲者が出るくらいだったら降伏した方が・・・」のセリフは「多くの犠牲者」を目撃した者には何より説得力があったのではないだろうか。森嶋と司馬、梅棹には思想・信条の共通性があるようには思えない。あるのは「共通体験」である。
 翻って、今「攻められたら降伏」という説を発表したらその学者はものすごいバッシングを受けるのではなかろうか。応援する方も勇気がいるものと思われる。しかし、今「降伏するより戦え」という者たちに戦争体験はほとんどないであろう。西鄕隆盛は鳥羽伏見の戦いで援軍の要請に対し「全滅したら(援軍を)送る」と言ったという。この言葉を「玉砕」と結びつけ美化して語る者もいる。そこに「全滅」させられる者への共感はないであろう。梅棹はそういう状況を「精神のきば」と表現していた。今、世界は「精神のきば」が跋扈しているのではないか。

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by yksayyys | 2017-01-07 14:37 | 社会 | Comments(0)