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アマノジャクはこう考える

呉座勇一「応仁の乱」(中公新書)を読む

 日本史の新書としては異例のベストセラーである。10月下旬に発行され、4ヶ月で14万部を超えているという。中公新書では以前「黄金太閤」もヒットしたが、それ以来であろうか。私も11月初旬には購入していた。奥付を見ると発行して10日余りで再版となっているので、最初から売れ続けているということがわかる。そういえば、朝日新聞の日本史コラムも人気の磯田道史からこの本の著者に替わっているので今が旬の歴史学者なのかもしれない。確かに切り口は面白く、これまでの通史的理解とは距離を置いた叙述なので面白いとは思うのだが、読みやすいかというと新書が一般向けの啓蒙書と考えると決して読みやすいとは思えない。数多の人物名、事件名はひとつひとつ整理していかないと、次の史実と結びついていかない。「応仁の乱以降の歴史がわかればよい。それ以前の歴史は現在を理解するのにわかる必要がない。」という言葉はずいぶん前から知っていたが、どうやら内藤湖南の言葉だったようである。厳密にその言葉がそうということはないであろうが、ある程度の説得力はあるようである。
 この本は応仁の乱の記述を奈良の興福寺からスタートさせているが、日本の隅っこにいる私の地域の歴史にもいろいろ関わりはあるようである。自宅の最寄りの神社は春日神社である。興福寺(藤原氏の氏寺)ゆかりの神社なのできっとこのあたりは藤原氏の所領であったのであろう。また、坊津に近衛某が流されたという史実を聞いたことがある。坊津には一乗院という大きな寺があったが、一乗院は近衛家ゆかりの寺であるというから、そのつながりで坊津に流されたというのもわかる。なるほど、地域史と通史とのつながりを考えながら読んでいくとこういう日本史ものもなかなか面白い。ベストセラーとなった理由はきっと誰か専門家がうまく説明してくれることでしょう。(笑)

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Commented by 闘龍灘 at 2017-03-02 23:01 x
先日、高知の集中講義から戻ってきました。

そのとき、本書が売れているのを知って早速書店で『応仁の乱』と『一揆の原理』の2冊を購入しました。

読んでみて、著者がマルクス主義歴史学の批判的理解から研究を進めていることがわかりました。応仁の乱の読み解き方も従来、評価されていなかった興福寺別当の史料から検討しているのが面白かったです。

寺社の上級階層が貴族の出家と出世に強く結びついていることがわかりました。階級闘争史観ではこの点を批判するのですが、その点をうまく読みといているのが近年の歴史学研究なのでしょうか。

寺社が日本史で有力な勢力であったことがあらためてよくわかりました。京都が舞台となった戦乱の背景に奈良が機能していたことは意外でした。一揆のほうも武器をもって農民反抗したのは一件だけでそれも明治になってからのイメージ像というのは驚きました。農民が支配階層に抵抗したという説明はこれから叙述の見直しが起こるのかもしれません。

もう一冊。『戦争の日本中世史-「下克上」は本当にあったのか-』も読んで日本史像を再考してみたいと思います。
Commented by yksayyys at 2017-03-03 06:19
なるほどそういうところですか。ただ、それが20万部を超えて売れているというのが私にとっては不思議に思えました。ある程度の知識がある人たちならともかくそうでない人たちにとっては決して「読みやすい」とは思えなかったからです。
 というか、この種の本にはこの程度の購買者の層が常にいるのかも知れませんね。意外に・・・・
by yksayyys | 2017-02-25 22:06 | 読書 | Comments(2)

ちょっとすねた感じでこの世を眺めてみると・・・
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