特攻の授業 単元設定の理由

以下指導案からの抜粋である。指導案検討も何もないので言いたい放題であるが、いいことを言っているのではないかと自分では思っている。

 戦争学習については、その歴史観の違いなどから大きな論争に発展することがある。これまでも「南京大虐殺」「従軍慰安婦」の教科書記述が問題とされたことがある。最近も、沖縄における「集団自決」に関する国の関与を否定する高校教科書の記述について問題提起がなされ、沖縄県民を中心とする運動が大きな盛り上がりをみせた。今後も、「戦争学習」については客観的事実の検証が進むとともにその歴史観の違いにもとづく論争は多かれ少なかれ存在していくものと考えられる。ただ、先の大戦の経験が現在の社会にあまりにも大きな影響を与えているのは事実であり、教室の内外で「戦争学習」を進めていくことは「今を生きる私たちの学習」であり、社会科の目的でもある「市民的資質の向上」にとって不可欠であることは間違いない。
 本単元においては、「世界」「アジア」「日本」という3つの視点から学習内容が構成されているといえる。そこでは、戦争の経過とともに戦争のもたらした「加害」と「被害」の実態を事実にもとづいて学習を深めることが要求されている。「加害」の視点については、1995年に出された村山首相談話にもとづき「アジアの諸国民に多大な犠牲を与えた」という立場を堅持する必要があると考えられる。また「被害」の実態についても、「ヒロシマ」「ナガサキ」「オキナワ」を中心に豊富な教育実践が展開されており修学旅行や文化祭などにおいても学習の中心として取り上げられることが多い。国民の共有財産として堅持していくことが意識として共有されているといえる。
 ただ、教科書の記述だけで戦争を語ることに対しては疑問を感じる。なぜなら、戦争は私たちの住んでいる鹿児島にも大きな傷痕を残しているからである。また、少なくなってきているとはいえ周囲にはまだまだ戦争体験者が存在しており、そういう地域の素材を私たちが有効に活用してきたとは言えないような気がする。「地域の視点から戦争を考える」これが、本単元において授業者が最も強調したい部分である。「地域の素材」については、鹿児島県中学校社会科研究会が発行している「郷土資料集」が貴重な教材・資料を提供している。本単元においても「郷土資料集」を有効に活用できたのではないかと考えている。
 では、「鹿児島と戦争」を考えるにあたって何を教材とするか。「ヒロシマ」「ナガサキ」が原爆、「オキナワ」が地上戦を意味するなら、鹿児島は、特攻と本土決戦ではないかと考えられる。沖縄戦を支援するために、本土決戦の最前線として、鹿児島には数多くの特攻基地が作られた。陸海軍の飛行機に限らず、震洋などの基地も県内各地にくまなく作られた。そして、数多くの若者が命を落とした。その事実については各記念館の展示や映画などによっても広く知られているが、どうしても「英霊賛美」物語として語られることが多く、実際に出撃した若者がどういう状況でどういう思いを抱いていたのかを具体的に聞く機会というのは少ないといえる。そんな中今回は、特攻隊生き残りの元兵士へのインタビューを通して、今まであまり伝えられて来なかったさまざまな真実を授業の中に生かすことができた。また、アメリカ軍、日本軍双方がこの鹿児島の地でどのような「本土決戦」を想定していたかをつぶさに見ていくことで、この鹿児島の地で「壮絶な地上戦」が実現された可能性があったことも理解できた。歴史に「もし」「たら」は必要ないという声を聞くこともあるが、この「本土決戦」については、具体的な計画として着々として準備されていたことであり、敗戦が数ヶ月ずれていたら鹿児島が「第2の沖縄」となっていたことは間違いことである。したがって、この鹿児島の地に住む人間としてその計画そのものを知っておくことは意義深いことではないかと考える。
 教科書においては「世界」「国家」レベルの「大きな物語」として「戦争」が語られることが多い。しかし、「戦争」は身近な「地域」で「家族」や「個人」を巻き込んでいくものである。そういう意味で、身近な素材を使った「小さな事実」を教材として積み上げていくことは私たち現場教師の大きな役割ではないかと考える。
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Commented by ska37o at 2007-12-03 11:07
 鹿児島(全国でも)の小学校社会科実践をリードするSさんは,「地域から日本(世界)がみえる実践」を意識しています。
 まさしく,「鹿児島から日本(世界)の歴史がみえる」教材研究や教材の発掘は大切な視点ですよね。
Commented by shin-pukupuku at 2007-12-03 12:10
 特攻隊生き残りの元兵士へのインタビューを通して、今まであまり伝えられて来なかったさまざまな真実を授業の中に生かすことができたーとても貴重な実践になりそうですね。これを読んで,授業を見に行きたくなりました。
by yksayyys | 2007-12-02 15:31 | 社会 | Comments(2)