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アマノジャクはこう考える

カテゴリ:読書( 451 )

藤田正勝「日本文化をよむ 5つのキーワード」(岩波新書)を読む

 「西田幾多郎」を読んだ時はそこまで思いませんでしたが、この著者なかなか読ませる文章を書きますね。この本を読む前に別の2冊の新書を読もうとしたのですが、「読みやすさ」「わかりやすさ」で選んだせいか「歯ごたえ」がなさすぎて早々に飽きてこの本に乗り換えましたが、なかなか味のある文章で面白かったです。特に出だしの「西行の『心』」は良かったですね。鎌倉時代ではありますが、その時代の時点で、西行が現代に生きる私たちよりはるかに深淵な思想・思考を積み重ねていたことがわかります。西行が詠んだ歌を通じて解明していきますので説得力があります。何より、今を生きる私たちが「共感」を持って読み進めることができます。そこを、「親鸞の『悪』」につなげていくところがまたいいですね。哲学が専門のようですが、文学に触れているような感覚でした。
 これから、1年生の歴史は中世に入っていきます。「武士の世の中」に生きた者たちの息づかいを大切に授業をしていこうと思います。

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by yksayyys | 2017-09-18 16:50 | 読書 | Comments(0)

木田元「哲学散歩」(文春文庫)を読む

 短い文章の集まりなので「読みやすいだろう」と思って購入しました。著者は数年前に亡くなったと思いますが、ハイデッガーの専門家で「わかりやすい哲学」を意識していた人というイメージがありました。でも、最初のあたりは難しかったです。私、ギリシャ・ローマ、イスラムの哲学・歴史の素養が全くないので、出てくる人物名に圧倒されて「何を言っているのか」がさっぱりわかりませんでした。せいぜい、タイトルにあるプラトン、アリストテレス等の小学生でも知っていそうな名前くらいしかわかりませんでした。著者は一生懸命つながりや背景を解説してくれているのですが、それがかえって固有名詞を増やすことになり、混乱と諦めを助長するだけでした。しかし、1冊読み終わり「解説」の所に「第7回から第10回あたりは話したい内容がしっかりしていた」とあったので、たぶん最初の方は専門家からみても「専門的」すぎたのかもしれません。「あ、面白いな」と思い始めたのは、中世の異端審問ブルーノの火刑あたりからでした。人的つながりよりも歴史的背景の理解に重きを置いた記述になっていたからだろうと思います。デカルト以降は、何となく予備知識が通用するようになって面白くなってきました。一番興味深く思えたのは、著者によるハイデッガー評価です。「ハイデッガーの『存在と時間』が読みたくて哲学科を選んだ」というくらいハイデッガーに興味を持った著者ですが、「ハイデッガーの性格は最悪」と言います。それも「割り切っている」風でもなく、「どうしてこうも最悪な人間だろう。俺はどうしてこうもこんな人物を・・・・」と思っています。ナチスに協力したハイデッガーを多くの弟子達が批判します。が、後に和解をする事が多くなります。その一人であるレーヴィットに対して「あなたくらいは最後まで・・・」と思ったりもします。 
 研究対象は好きになる事が普通で、好きだからこそ研究対象になるのだと思いますが・・・・それだからこそ、この本が面白かったのかもしれませんが・・・・・

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by yksayyys | 2017-09-17 12:04 | 読書 | Comments(0)

佐藤卓己「総説 教育の実験をしてよいか」(岩波講座現代第8巻『学習する社会の明日』所収)を読む

「教育はもっとも実験室化してはならぬものでありながら、もっとも実験室化しやすいもの」(福田恆存)
岩波講座「現代」の第8巻「教育」を扱ったこの本の巻頭はこの保守思想家の言葉から始まる。福田は単なる「保守反動」ではなく「現実主義的ペシミズム」の思想家だと思う。だから時々「なるほど」と思わされることがある。戦後に「保守」「革新」と分かれた時に、福田は「革新」の中にも反知性主義を見抜いたと思われる。「革新」の中におけるマルクス主義の影響や冷戦の影を感じたのだろうと思う。ここで言う福田の実験室化はいわゆる視聴覚教育やデジタル教育などを指すものではなく「道徳教育」のことを言っている。そして、「教育の力で社会や人間を変えうるなどという妄想は抱かぬ方がいいのです。」と述べる。福田は、戦前の戦争教育も、戦後の「民主主義」「平和」の教育も、結局「徳育」に変わりないと断じる。そして、結局残るのは「知識の伝達と訓練」だと言う。教育現場に30年以上いる人間として、とても説得力のある言葉と思える。私は「徳育」も「体育」も「怪しい」と思っている。この論考の著者もそう思っている気配がある。このような講座が編まれる時の常套文句は「時代の転換期」という言葉である。しかし、黒板があって生徒の机と椅子があってという教室の様子はここ数十年ずっと変化がなかった。そうなっているのはそれなりの理由があると思うし、私も著者同様50年後もそういう教室であってほしいと思っている。
 「教育」が張り切るとあまり良いことはない気がする。「教育が大切」とのたまう人たちの表情、言説は「怖い」!もっと控えめに、福田がいうところの「子どもがそこにいれば勝手に育つ、そのような場所をどう用意しておくかが、大人の責務ではないのか。」という事を政治家や教育行政に携わる人たちは考えるべきではないだろうか。
 岩波講座も昔からするとずいぶん読みやすい文体になりましたね。そういう意図で書かれているのか、時代の変遷なのか・・・私には歓迎ですが・・・

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by yksayyys | 2017-08-23 17:51 | 読書 | Comments(0)

原井一郎「苦い砂糖」(高城書房)を読む

 若い頃、奄美に3年間いました。その頃、奄美に対する差別の話をいっぱい聞きました。聞くだけではなく実感することもありました。その差別の出所はいつも「役所関係」だったと記憶しています。ただ、身近に熱心な郷土史家がいたにもかかわらず、私自身この問題に取り組んだとか教材化したとかいう事はありませんでした。「夏休みの友」に原稿を書いたのも、島を離れてからでした。 
 その奄美に対する差別が最もわかりやすいかたちで構造的に示されたのが「黒糖収奪」だろうと思います。それが、江戸時代にとどまらず、明治になってからも続いていたことを知る人はあまりいないだろうと思います。特に鹿児島本土の人間は知らないだろうと思います。奄美の人たちの中に西郷を「偉人」とみない人がかなりいることもこの問題が理由だと考えられます。しかし、この本に描かれているのはただ「酷い」という事だけではありません。この差別と闘った丸田南里をはじめとする人々の姿があります。その両方を見すえることが、「歴史」に学ぶことだろうと思います。

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by yksayyys | 2017-08-23 09:58 | 読書 | Comments(0)

現代思想「丸山真男生誕100年」(青土社)を読む

 ひとつのテーマに向かった読書・文献購読を続けているとさすがに疲れるものです。ということで、気分転換に3年前に買ったこの雑誌を読みました。ただ、気分転換という程気楽に読めるものではありません。思想雑誌ですので、哲学・倫理関係の執筆者が多くなかなか頭を使います。出だしの二人、長谷川宏、最首悟は有名ですね。どちらも学園紛争時代に東大にいて丸山とは対峙した側の人物です。だから、文章に「トゲ」があって面白いですね。次は、杉田敦のインタビュー。丸山の流れを組む政治学者だろうと思います。次が川本隆史と苅部直の対談。ロールズの専門家と丸山の評伝を岩波新書で書いた両人による対談です。「正義」を真ん中においた議論でした。第二章は丸山の「本店」と言われる日本政治思想史に関するいわゆる論考が並びます。「ナショナリズム論」「儒教論」「天皇論」と続きました。私が、丸山を好きな理由は、研究対象との距離、その思惟方法だろうと思います。本人は相当な「おしゃべり」と聞いていますが、研究スタイルはきっと違うのだろうと思います。あと、この人のお弟子さんたちが好きですね。藤田省三、松下圭一、神島二郎、石田雄・・・師匠との「ズレ」がとても興味深いです。「えらい研究者はえらい弟子を生む」そういう事だろうと思います。いろいろ師弟の葛藤はあったようですけど。研究者の世界というのはそういうもののようですが・・・
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by yksayyys | 2017-08-20 12:18 | 読書 | Comments(0)

西村京太郎「15歳の戦争 陸軍幼年学校最後の生徒」(集英社新書)を読む

 論文書きにいちおうの目途がついたので、先日購入したこの本を読んでいます。トラベルミステリーで有名な著者がはじめて自身の戦争体験・戦後体験について書いています。小説家だけに文章が上手いし、視点が面白いですね。陸軍幼年学校での生活など微に入り細に入り、生徒でしかわからない話がいっぱい詰まっていました。このように、これまで語ってこなかった人たちが今戦争を語り出したのは、やはり今が戦争の危機にあるからだと思います。内に安倍政権、外に北朝鮮、トランプ大統領と戦争の危機につながる要素がこれほどある時代は戦後なかったはずです。それゆえの「叫び」なのではないでしょうか。それを、声高でなく「事実を淡々と、ユーモアたっぷりに描く」ところにこの本の面白さ・意義がある。ちょっと、ゆっくりとしたい、でもまじめに今を考えたい、そんな時にオススメの本です。
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by yksayyys | 2017-08-15 13:19 | 読書 | Comments(0)

千葉雅也「勉強の哲学ー来たるべきバカのためにー」(文藝春秋)を読む

 売れてる本のようです。「どうして勉強しないといけないのか」なんて今さら説教されたくないや!と思っていましたが、ちょっと手にとって斜め読みしたところ、「確かにそういう事はある」!と思うところがあり、そのまま購入して読みました。勉強すると「浮く」「ずれる」そして「バカになる」。簡単に言うとそういう事ですが、著者はそれを積極的にとらえ「自分を変えること」だと言います。研究者と呼ばれる人たちと接していると時々そう思うことがありました。それは「研究への自信」と「世間とのずれ」だと思っていましたが、それをメカニズムとして説明してくれている気がしました。私もちょっとだけそういうところがあります。会話に「アイロニー(皮肉)」と「ユーモア(冗談)」を入れたがるんですよね。結果として「浮く」ことも多いですし「KY(空気を読めない)」(私のイニシャルではありません)と言われることがあります。それを今まで自分の血液型(B型)のせいにしてきましたが、この本を読むと「なるほど」と思うところが多々ありました。 
 別に自分を「勉強している人間」に分類しようとは思いませんが、これから「浮いたり」「ずれたり」した時はあまり気にせず「このままバカになってやろう」と開き直れる気がしました。私の友人にもそういう人たちが多いですがどうやら血液型のせい(だけ)ではないようです。

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by yksayyys | 2017-07-24 06:00 | 読書 | Comments(0)

上原善弘「路地の子」(新潮文庫)の衝撃

 この本、読み始めは「食肉業界」の描写のリアルさに感銘を受けていたのですが、読み進めるごとに「重苦しい」気持ちに包まれていきました。著者の父親を中心とする家族の物語なんですよね。差別を正面として扱うのであれば、そういう社会問題の視点から掘り下げていくのでしょうが、この本は今風で言うと「ライフストーリー」と言えます。ところがその「ライフストーリー」があまりに過酷で衝撃的すぎるのです。この過酷さと衝撃を「差別」問題に結びつける読者はあまりいないのではないかと思いました。私は「差別」に結びついていると思いましたがあまりにも強烈な個性と事件に満ち溢れたこの著書はあまりにも「劇的」すぎてノンフィクションとは言えない気がしました。そして、同和利権告発の経過を見た時に「新潮社らしい」とも思いました。 
 私は、この本の著者を心配しています。ここまで赤裸々に家族を中心とする周囲の人々を描いて大丈夫なのでしょうか。私にはこの著者のこの執筆の動機は「狂気」に近いとも思えました。きわめて私小説に近いこのノンフィクション!救われる者は誰かいるのでしょうか。

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by yksayyys | 2017-06-25 20:54 | 読書 | Comments(0)

上原善弘「路地の子」(新潮社)の迫力

 昨日届いたこの本を早速読み始めました。冒頭の文章がすごいですね。屠場の描写なのですが、実にリアルで迫力があります。以前、岩波新書「屠場」を読んだ時も衝撃を受けた覚えがありますが、今回はそれ以上と言えます。私の中学生時代、通学途中に屠場(当時は屠殺場と呼んでいた)があり、家畜の「悲鳴」が聞こえていましたが、このような場面があったんですね。この本は、被差別の立場にある者たちを描いたものです。著者はずっと被差別部落を描いてきましたが、今回「被差別を書くのは最後」と言っています。それだけに、これまで以上にリアルで迫力ある描写となっているのでしょう。一緒に購入した3冊の本を読むのも楽しみです。
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by yksayyys | 2017-06-21 06:33 | 読書 | Comments(0)

上原善弘という人

 今日、アマゾンで上原善弘の本を4冊注文しました。この人の本は面白いですよね。「差別と教育と私」「発掘狂騒史」など興味深く読ませてもらいました。今度「路地の子」という本が出ます。自伝モノで被差別部落を扱った内容の集大成と言える本のようです。ついでに、と言っては失礼ですが、それ以外に3冊の本も注文しました。魂のこもった4冊の著書。魂をこめて読もうと思います。

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by yksayyys | 2017-06-18 23:01 | 読書 | Comments(0)

ちょっとすねた感じでこの世を眺めてみると・・・