カテゴリ:読書( 441 )

ヒトラーの裁判官

 今日の朝日新聞の朝刊の読書欄にヘルムート・オルトナー著「ヒトラーの裁判官フライスラー」(白水社)の書評が載っていた。悪名高きヒトラーの人民法廷の裁判官である。私はすぐに映画「白バラは死なず」を思い出した。ナチス批判のビラを撒いた学生に対し、元共産党員の裁判官は弁護士もいない法廷でひたすら学生を糾弾する。そして、「万死に値する」と死刑を求刑し、残酷な方法で処刑する。映画の中の裁判官は元共産党員であったという過去を覆い隠すために逆に徹底的にヒトラー擁護の先頭に立つ。この書評を読むと、この人民裁判の裁判官たちの多くは戦後「ナチスの法に従っただけ」と罪を許され復職も許されたという。当人たちは自分たちも「ナチスの犠牲者」とみなし「後悔の念」もないという。書評にもあるように「どこの国にもどの時代にもある無責任体質」である。著者は何度も周囲に「今さらナチスの過去について書く必要があるのか」と問われたという。「歴史健忘症」はドイツだけではない。この国ではもっと深刻な形で進行している。
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by yksayyys | 2017-05-21 08:08 | 読書 | Comments(0)

娘がアドラー

 相変わらず対人関係が築けず泣いてばかりいる娘ですが、このごろ珍しく本を読んでいるので表紙を見たところアドラーの「嫌われる勇気」でした。たしかに娘にはいい本だなと思いました。以前も勧めようとしたことがありますが、最近特に「親の押しつけ」を嫌うので言うに言えないでいました。娘に「どうしたの、アドラーなんか読んじゃって」と聞くと、「先輩に勧められた」ということでした。おそらく、娘の日常生活を見た部活動の先輩が親切心で勧めたのだろうと思います。ジャニーズの雑誌以外何も読まない娘ですが、この本だけはずっと読んでいます。ただし、「難しい」そうです。そうでしょうね。中高生にはちょっと・・・かもしれません。でも、何か「ふっきれる」きっかけになってくれることを切に望んでいます。

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by yksayyys | 2017-03-31 20:37 | 読書 | Comments(0)

原田國男「裁判の非情と人情」(岩波新書)を読んで

 岩波新書の最新刊です。裁判官の「人間味あふれる日常」を裁判官本人が書いたものです。本の帯に山田洋次監督の「こんな裁判官がいる限りこの国の法曹界を信じたい」という言葉がありますが、まさにそう思わせる内容だと思います。この著者は藤沢周平と池波正太郎を愛読するだけあって庶民の哀感を大切にしていることがわかります。それが、裁判官の職務に結びついているところが何だかホッとするところです。法学者のUn先生が、口癖のように「最後は人だ」と言っていましたが、それを証明する本だと思います。まあ、そういう理屈をぬきにしても、裁判官の日常を知ることができるとてもわかりやすいユーモアあふれる内容です。岩波新書もずいぶん柔らかくなったなと思いました。
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by yksayyys | 2017-03-20 20:41 | 読書 | Comments(0)

村上春樹「騎士団長殺し」(新潮社)を読む

 発売日にネット予約し、先週の月曜日の夜から「寝る前の読書」で読み進めています。私も初版100万部に協力していることになります。睡魔に襲われながらの読書なのでなかなか進みませんが、今第1巻の終わりあたりまできました。「今度のはあまり面白くないなあ」と思っていましたが、途中からだんだん面白くなってきました。そういう構成になっているのでしょう。個人的には、初期のシンプルな作品が好きでしたが、この頃は最近のものもそれなりに面白いと思えるようになりました。 
 「困ったな」と思うのは、息子が読んでいることです。「蜜蜂と遠雷」も私よりもずっと早く読み終わった息子ですが、今度もこっそり持ち出して私より早いペースで読み進めているようです。中1が読むには「ちょっと」という箇所がずいぶんあるのですが、読み始めたものはしょうがないかな!と放っておいていますが・・・・

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by yksayyys | 2017-03-05 10:56 | 読書 | Comments(2)

呉座勇一「応仁の乱」(中公新書)を読む

 日本史の新書としては異例のベストセラーである。10月下旬に発行され、4ヶ月で14万部を超えているという。中公新書では以前「黄金太閤」もヒットしたが、それ以来であろうか。私も11月初旬には購入していた。奥付を見ると発行して10日余りで再版となっているので、最初から売れ続けているということがわかる。そういえば、朝日新聞の日本史コラムも人気の磯田道史からこの本の著者に替わっているので今が旬の歴史学者なのかもしれない。確かに切り口は面白く、これまでの通史的理解とは距離を置いた叙述なので面白いとは思うのだが、読みやすいかというと新書が一般向けの啓蒙書と考えると決して読みやすいとは思えない。数多の人物名、事件名はひとつひとつ整理していかないと、次の史実と結びついていかない。「応仁の乱以降の歴史がわかればよい。それ以前の歴史は現在を理解するのにわかる必要がない。」という言葉はずいぶん前から知っていたが、どうやら内藤湖南の言葉だったようである。厳密にその言葉がそうということはないであろうが、ある程度の説得力はあるようである。
 この本は応仁の乱の記述を奈良の興福寺からスタートさせているが、日本の隅っこにいる私の地域の歴史にもいろいろ関わりはあるようである。自宅の最寄りの神社は春日神社である。興福寺(藤原氏の氏寺)ゆかりの神社なのできっとこのあたりは藤原氏の所領であったのであろう。また、坊津に近衛某が流されたという史実を聞いたことがある。坊津には一乗院という大きな寺があったが、一乗院は近衛家ゆかりの寺であるというから、そのつながりで坊津に流されたというのもわかる。なるほど、地域史と通史とのつながりを考えながら読んでいくとこういう日本史ものもなかなか面白い。ベストセラーとなった理由はきっと誰か専門家がうまく説明してくれることでしょう。(笑)

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by yksayyys | 2017-02-25 22:06 | 読書 | Comments(2)

上原善広「発掘狂騒史~「岩宿」から「神の手」まで」(新潮文庫)を読む

 直木賞受賞の「蜜蜂と遠雷」がなかなか進まない(面白いのですが、何せ大部なので)ので、同時進行で読み始めたのがこの本です。岩宿遺跡発掘の相澤忠洋から発掘捏造の藤村新一までの「光と影の考古学界群像劇」です。著者の書いたものは、以前被差別部落や解放教育を扱ったものを読んだことがあります。いわゆる高学歴のインテリではない、人間味あふれるタッチのノンフィクション作家と言えるのではないかと思います。考古学というと私は、月に1回は会っている社会科のN会長を思い浮かべます。この本に出てくる「考古ボーイ」という言葉はまさにN会長のような人を指すのだろうと思います。遺跡や発掘の様子を話す時のあのいきいきとした表情に接する時、「そんなにも楽しいものだろうか」と思ってしまうものです。しかし、この本を読むとその熱気というものが痛いほどよくわかるような気がします。戦後、皇国史観から解き放たれた考古学は「そもそも日本人のルーツは?」を科学的につきつめるための魅力的な学問となりました。が、戦後まもなくまで日本には「縄文時代以前の旧石器時代というものは存在しない」のが常識だったそうです。そこに相澤忠洋が関東ローム層の中に打製石器を発見する。大発見中の大発見なのですが、学界というのは研究者の世界というのはそう簡単に「めでたしめでたし」とはいきません。このあたりは、私も少しは経験したような気がします。学閥であったり、研究者の縄張りであったりというものは今でも存在しますし、結構な「タテ社会」だなと感じることがあります。ただ、そんな中、芹沢長介をはじめとするアカデミズムの人間といわゆる考古ボーイたちがつながって、画期的な発見へとつながっていくストーリーは実に感動的だと言えます。・・・・それが後の「神の手」の事件につながるというところはやはりこの大宅壮一ノンフクション大賞受賞作家の「腕」というところでしょうか・・・・
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by yksayyys | 2017-02-14 20:45 | 読書 | Comments(1)

恩田陸「蜜蜂と遠雷」(幻冬舎)は面白そう!!

 直木賞受賞作品「蜜蜂と遠雷」は面白そうです。というか読み始めているので正確に言うと「面白い」です。やはり、私は文体よりはストーリーの方に惹かれるようです。500頁に及ぶ大作ですが、ワクワク、ドキドキの場面展開に身も心も躍っています。わかりやすい文章、スリリングな展開。私は大衆文学向きなのでしょう。眠る前の時間に読み進めることにしていますが、今からその時が楽しみです・・・
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by yksayyys | 2017-01-31 20:30 | 読書 | Comments(0)

山下澄人「しんせかい」(新潮社)を読む

 第156回芥川賞作品である。前回に引き続き芥川賞・直木賞作品を読むことにした。直木賞作品の方はずいぶん分厚かったので薄いこちらの方を読んだ。読むのに2時間とかからなかった。読むスピードはあまり速いほうではないのだが、それでもその程度だった。 
 読後感は「何が面白いのだろうか」のひとことであった。倉本聰が作った富良野塾二期生の1年間を二期生のひとりである著者が丹念に日常を描いたものであった。おそらくほとんどが本当の話なのであろう。だから、一貫したストーリーというものはなく、やたらと風景描写、状況描写が細かかった。ああ、これが純文学というものかとも思った。本の帯には「音楽を聴いているような小説」とあったが、そう言われてみるとそうかなあと・・・・
 次は直木賞作品。音楽を聴いているような、ではなく音楽を素材にした長編小説である。芥川賞作品は120頁くらいだったから4倍以上の長さである。しかも2段組。でも、こちらの方がハラハラドキドキで面白いような気がしている。

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by yksayyys | 2017-01-29 16:04 | 読書 | Comments(0)

国谷裕子「キャスターという仕事」(岩波新書)を読む

 言わずと知れた「クローズアップ現代」のキャスターを務めた国谷さんのまさに「クローズアップ現代」を扱った著書です。私がこの本を読み進めながら思ったことは「国谷さんという人は日本人離れしたジャーナリストである」ということでした。でも、理由はおそらくとても簡単な事でした。国谷さんが外国育ちの帰国子女であったということです。語彙、知識ともに「日本語がよくわからない」という国谷さんにとって帰国子女ゆえの「ストレートな発想」と逆に「日本を知らねば」という意欲がこの番組を支えたのだろうと思います。この本の中にある「私はこういう力をつけた」「私はこういうことが出来るようになった」という断定調の言葉は「純日本」の人間からはなかなか出てこないのではないかと思いました。それだからこそ、世界の要人や日本のキーマンたちに臆することなくインタビューできたのでしょうし、多くの人々の支持と賞賛を得たのだろうと思います。こういう人たちはまだまだメディアの中にはたくさんいるのだろうと思いますし、そう信じたいと思います。
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by yksayyys | 2017-01-28 19:33 | 読書 | Comments(0)

桂太郎と参謀本部

 「国際化時代と『大正日本』」を読む中で「教科書的通史」の修正を必要とする記述もあった。桂太郎と参謀本部と書いたが、2つに直接的なつながりはない。
 桂太郎はこれまで「第一次護憲運動」で「閥族」の代表的人物として倒閣運動の対象となったこととして有名である。尾崎行雄が桂を批判した時の「玉座を以て胸壁となし、詔勅を以て弾丸と為す」の言葉は当時の国民を十分に鼓舞しただろうと思われる名セリフである。しかし、桂の実像はかなり違うようである。立憲政友会に対抗して立憲同志会という政党を作ったのは知っていたが、これまでの知識では「政党政治勢力をつぶすために官僚等を動員した政党」というイメージであった。伊藤博文が自由党、立憲改進党に対抗して立憲政友会を作ったのと同じ理由である。しかし、この立憲同志会は社会政策を掲げるなどかなり進歩的な考えを持つ政党であったようである。政友会の「利益誘導」体質に反発する勢力が結集した側面があるとのこと。後藤新平の入党は典型であるし、若槻礼次郎、加藤高明などかなり洗練された人物も結集していた。桂は倒閣運動によって首相を辞任し、のちガンで亡くなってしまい、この政党は加藤高明によって引き継がれていく。最後は民政党として2大政党に成長することにもなる。 
 統帥権の問題がのちの軍国主義の台頭を許す事になったとよく言われるが、その統帥権の元凶参謀本部が政府の統制から離れたのは実は桂内閣後の山本内閣の時である。山本内閣は、軍部の横暴を抑えるために陸軍大臣の現役武官制を廃止しその対象を退役軍人に対象を拡大した。退役軍人に軍部の命令は届かないために、それはそれで軍を抑える事に役立ったと思われる。が、その時に軍が組織改革を行い、軍の編成権など実質的権力を陸軍省から参謀本部に一括して集中したのである。軍の暴走を抑える政策が軍の暴走を許す改革につながったという皮肉な結果となったのである。
 

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by yksayyys | 2017-01-22 09:15 | 読書 | Comments(0)

ちょっとすねた感じでこの世を眺めてみると・・・


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