今村昌平と田村高廣
「今村昌平」
結構この人の作品は好きで、いろいろ見ています。特に70年代から80年代に発表したものが好きでしたが、何といっても印象に残っているのが「楢山節考」です。カンヌ映画祭グランプリ作品ですが、まず深沢七郎という奇人作家の作品を取り上げるというところがいい。そして、「姥棄て伝説」を素材にしたこの作品の逃れようのない「暗さ」と底流に流れる「優しさ」。「いったい何時代なんだろう」とあとから真剣に考えたが、全くわからなかった。江戸時代とも室町時代ともいつでもとれるような、深刻な奥深い村での「生」と「性」をめぐる叙事詩であった。私は、授業の中で農村における「寄合」や「5人組」などを説明する時にこの映画をよく紹介しています。特に「盗癖」のある家族を村人で相談して「皆殺し」にするシーンなど生徒達はシーンとなって聞いています。晩年は「うなぎ」のような作品も発表するようになりましたが、私は緒方拳が出るドロドロしたものが好きです。
「田村高廣」
映画もテレビもいっぱい出ていますが、私は「泥の河」が好きでした。小栗康平監督のモノクロ作品でしたが、田村演じる庶民の哀感と加賀まり子演じる娼婦の艶めかしさが印象に残っています。映画の中で、働き手の父親を亡くした家庭に対し田村が「有り金ぜんぶ持って行きなさい。」と妻藤田弓子に伝え、妻はごく当然のように「有り金全部」を引き出すために通帳を取り出す。ケチな私は映画館でそのシーンを見ながら「自分たちも相当貧しいくせに」と小声でつぶやいたのを覚えています。若い頃の演技も良かったようですが、私たちにはやはりインテリくずれのおじさんぽい役が印象に残っています。
映画、最近全然見てないなあ。