上原善弘「路地の子」(新潮文庫)の衝撃

 この本、読み始めは「食肉業界」の描写のリアルさに感銘を受けていたのですが、読み進めるごとに「重苦しい」気持ちに包まれていきました。著者の父親を中心とする家族の物語なんですよね。差別を正面として扱うのであれば、そういう社会問題の視点から掘り下げていくのでしょうが、この本は今風で言うと「ライフストーリー」と言えます。ところがその「ライフストーリー」があまりに過酷で衝撃的すぎるのです。この過酷さと衝撃を「差別」問題に結びつける読者はあまりいないのではないかと思いました。私は「差別」に結びついていると思いましたがあまりにも強烈な個性と事件に満ち溢れたこの著書はあまりにも「劇的」すぎてノンフィクションとは言えない気がしました。そして、同和利権告発の経過を見た時に「新潮社らしい」とも思いました。 
 私は、この本の著者を心配しています。ここまで赤裸々に家族を中心とする周囲の人々を描いて大丈夫なのでしょうか。私にはこの著者のこの執筆の動機は「狂気」に近いとも思えました。きわめて私小説に近いこのノンフィクション!救われる者は誰かいるのでしょうか。

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by yksayyys | 2017-06-25 20:54 | 読書 | Comments(0)