
鹿児島では有名な特攻隊の写真である。少年兵が子犬と戯れる無邪気な笑顔がみる者の心を打つ。知覧の特攻平和会館の講談師いや語り部はこの少年兵に名前をつけて「・・・・ちゃんは」などと呼んで思い出話に花を咲かせるという。しかし、この写真は知覧の特攻隊のものではない。加世田の万世の特攻基地の兵隊たちである。知覧は陸軍、万世は海軍。当時の陸海軍の関係を考えれば交流などあったはずもない。造作の匂いがする。そして、この写真を見て「喜んで死んでいった」という物語にする人もいる。しかし、浜園さんは「出撃前に笑う人なんていない」と断言していた。岩波新書の吉田裕「アジア・太平洋戦争」にも沈痛な雰囲気に包まれた出撃前の特攻隊の様子が当時の軍の書類から明らかにされている。いろいろな人に「ふざけるな」と言いたい。
ただ、この写真を見ると心うたれるのは事実である。こんな年端もいかない若者を死へと追いやる「非情さ」、それを強いる「者たち」を思うとはらわたが煮えくりかえる思いがする。この思いは、この四半世紀変わることはない。高校時代に「きけわだつみのこえ」を読んでからずっと・・・・・きっと、永遠に続くであろう。