現代思想が増刊号で網野善彦特集

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 現在思想の2月臨時増刊号は網野善彦特集でした。表紙でこのように微笑まれては買うしかありません。没後10年ということですが、早いですね。もうそんなに経ちますか。
 パラパラとめくって読んだだけですが、結構読みやすく作られていると思いました。内容としては、当然ですが網野さん独特の「無縁」「非農業民」などの個別の学問論と歴史学への影響と言った総論に多くの頁が割かれているようでした。晩年、「歴史としての戦後史学」などで自らの思想・学問の遍歴を語っていた影響からか、マルクス主義歴史学との関わり、格闘について触れた論考がいくつもありました。巻頭の柄谷行人など初っぱなからその話でした。あと、個別の学問論についても時間が経って疑問符がつくものもいくつか出てきているような気もしました。いつも大胆な仮説をたてる人でしたので細かい部分ではそういうところもあったと思います。しかし、それでも大きな影響を与えた歴史家であることは間違いないことです。宮崎駿をはじめ歴史学以外の人々への影響も多大なものがあったと思います。
 
 最後の編集後記に「(網野は)生涯マルキシストを自認していた」とありました。きっといろいろなものと格闘し続けた一生だったのでしょう。
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by yksayyys | 2015-01-12 22:06 | 読書 | Comments(0)

面白かったピケティ講義

 NHKEテレの「パリ白熱教室」を最後まで観ました。「経済の話は難しい」という私の思い込みはだいぶやわらいだ気がします。数字やデータはいっぱい出てきますが、あくまで推移や比較の指標なのでそこで立ち止まって苦悩するということはありませんでした。ピケティの「21世紀の資本」が世界中で読まれている理由は一にわかりやすさ、二に格差是正への指向性にあるような気がします。今回の内容で印象に残ったことを3つ挙げてみます。①産業革命から現在までの平均経済成長率は1,6%であるということ。産業革命やら高度経済成長やらで200年間相当な経済成長を遂げてきたように思えるが平均すると1,6%に過ぎないのです。アベノミクスが高成長を目指しているようですが、そのような高成長は歴史の中の例外にすぎないのだということがわかりました。②所得税の歴史の比較。100年前は所得税というものはなかったのだそうです。所詮経済は「神のみえざる手」に導かれているので「所得格差を是正しよう」という発想がなかったようです。それが大戦中あたりから「格差是正」が叫ばれるようになりその後各国で累進課税による所得税が導入されたようです。日本とドイツの税制はほぼ同じものでした。アメリカつまり占領軍によって作られたものだからです。それは懲罰的というよりはニューディーラーと呼ばれる民主的官僚たちによる理想主義的政策と理解した方が良いということです。日本の占領政策前期にはそういう人たちの思想が多々感じられます。意外だったのは、現在格差拡大の典型のようなアメリカ、イギリスはかつて所得税は世界でも最高に近い税率だったということです。いわゆるレーガン、サッチャーの富裕層優遇の経済政策により所得税が大幅に下げられたということです。両国の格差拡大の原因はここにあるのでしょう。③データ開示の重要性。ピケティは今後の経済政策にとって重要なのはデータの情報開示にあると指摘しています。先進国はほぼ公開していますが、韓国、台湾が公開したのは最近のようで、中国は一切公開していないようです。公開することで明らかになる問題点の指摘を恐れているようです。
 まだまだ得たものは多いのですが、続きは来週の番組を観てからにします。

 最後に、なぜピケティの講義がわかりやすかったか。それは、「歴史に学べ」というスタンスをとっているからだと思います。歴史好きの私にとってそれは重要なタームです。
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by yksayyys | 2015-01-12 20:25 | 社会 | Comments(0)

松岡肇「日中歴史和解への道」高文研を読む

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 友人が手がけた本です。副題に「戦後補償裁判からみた中国人強制連行・強制労働事件」とあります。ちょうど4年前に自分が取り組んだ学会論文とそのまま重なる内容の本でした。本の帯には次のような文章もあります。「アジア太平洋戦争末期、強制連行された中国人4万人を強制労働させた企業は35社、戦後60年が過ぎて、和解に応じた企業は3社!」私はこの和解に応じた企業3社のうちのひとつN建設の訴訟判決文に着目して授業実践を行い論文を書きました。あの時はこの判決文を判決としては原告敗訴としながらも「強制連行、強制労働の事実を認めて和解を促した」ことから人権課題の解決の前進につながるものとして評価する教材資料と考えました。その位置づけは今も変わりませんが、あの裁判は国家賠償を求めることをあきらめあくまで企業に損害賠償を求めていたという側面があります。企業相手であるがゆえに踏み込んだ判決内容となったものと言えると思います。しかし、和解に応じた企業の数も全体としては35社中3社にしか過ぎないのも事実です。本書のP8,9には全国の中国人強制連行、強制労働事業所135カ所の地図が掲載されています。その135カ所の「事実」がきちんと掘り起こされ教材化されることを願っています。なお、この分野では野添憲司さんが花岡事件をはじめとして多くの事例を取材し本として残してもいます。
 
 そんな中S研出版が高校の公民教科書から強制連行、慰安婦の記述を削除したニュースが流れました。政権にすりよる自粛ということでしょうか。残念なことです。
 
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by yksayyys | 2015-01-12 19:02 | 読書 | Comments(0)